A Story
思い出されるのは、現在の本にはないその美しさに、何気なく惹かれて初めて手元にしたフランスの古書。
100年以上も前の、アルマナックと呼ばれる1冊。
甘えん坊の我が子が寝静まった後に、試しに開いてみたら
カレンダーのような日付やメモ欄もついていて、なんだかとても実用的、
‥それにしては美しい佇まい、月の満ち欠けのようなオシャレな表や、細やかな挿画なども沢山。
本物の経年焼けしたページに、フランス語の文章も何やらびっしりと。
突然に遠い国へと時間旅行が始まり、気づけば夢中でページを捲っていました。
そして目に飛び込んできたのは、
素敵なデザイン枠のあるページの隅や、威厳高く笑う男性の図版の隣など、あちこちに
ちょっぴりおふざけしたような手描きの絵の数々。
大人向けの手帳でしたので、きっとこれは
当時の持ち主さんの子供が、親御さんから本を借りて描いたのか、はたまた、くすくす笑いながらこっそり落書きしたのか‥
時代も文化も違うのに、まるで、昨日我が子が描いた絵と同じよう!
静かにしないといけない場面で、退屈しないように筆と一緒に持たせてあげたのかもしれない。
母である自分にもよくあるシチュエーション。
あぁ同じだなと、何だか分かったような気がして、自然と口元が緩んでいました。
でも‥
違うのは、こちらの親子のその後の人生は、
現在ではもう既に過去のものだということ。
お絵描きをした子は、その後の戦禍を経てどんな大人に成長したのだろう、
家族仲良く、愛情に溢れた人生を過ごせたのだろうか‥
日常のひとコマが確かに刻まれていた古書を手にしながら、
急に色々な感情が湧き起こりました。
時代や文化の違いを超えて共感できる感動の先に、日々の喧騒で忘れかけていた、今という瞬間の大切さ。
そんな事を教えてくれたように感じました。
しばらく思いに耽りながら、古書を通して絆が繋がった気もして、感謝しながら本を閉じました。
‥ 拙い筆ながら自分の体験を伝えさせていただきましたが、
古書にはこのように感情を強く揺さぶる事以外にも、目に映える装丁の美しさ、長い年月を経た味わいなどを
ディスプレイして醸し出す雰囲気をゆったりと愛でることが出来たり、
本体から外れてしまったページは、アート作品となってくれたりします。
当時の作家さんの軌跡や想い、先人のアーティストの方々の挿画作品の数々に感銘を受けたり‥
本の製作に尽力され、そして手元まで繋げてくれた全ての方々に畏敬の念を覚えるような
言い尽くせない素晴らしさがあります。
更に遠い国から辿り着いたものは、年代の違いに加え、言葉や文化も異なっており
何を伝えているのだろう、こちらの作品が生まれたこの国は、当時の時代背景や取り巻く環境とはどんなものだったのだろう‥と、
深掘りする事により新たな発見や感動があったりなど‥
まるで心の扉が開いていくような、奥深い魅力があると信じています。
当店では少しずつですが、イギリス・ドイツ・オーストリア・スウェーデン・オランダ・チェコ・フランス等より
古い年代の書籍を中心に、店頭に並べてまいります。
夜空に優しく光る、星の瞬きを見つけ出すように
どうぞ、ゆっくりとお楽しみください。
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